INNOVATION

「テクノロジーの民主化」に込めた想いとは?ソラコム代表取締役・玉川憲氏に聞く、日本企業のDX課題とIoTの可能性

Jun 16, 2021

国をあげてデジタル化推進が叫ばれている現在の日本。しかし、企業が最新テクノロジーで事業を変革するには、まだまだ多くの課題や障壁が存在します。

そのような状況のなか「テクノロジーの民主化」を掲げ、日本企業のビジネス変革やイノベーション推進のサポートを行っているのがIoTプラットフォーム事業を展開する株式会社ソラコムです。
東京センチュリーとは、IoTソリューションをサブスクリプション形式で提供するサービス「IoT SELECTION connected with SORACOM(IoT SELECTION)」を共同で運営しています。

日本企業のDX化の課題やIoTの今後の可能性などについて、東京センチュリーDX戦略部を統括する専務執行役員の吉野康司が、ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏にお話を伺いました。

東京センチュリーDX戦略部を統括する専務執⾏役員 の吉野康司が、ソラコム代表取締役社⻑の⽟川憲⽒にお話を伺いました。
          

日本企業ならではの勝ち方、日本全体でのDX戦略が必要

吉野:玉川さんは日本IBM、アマゾンデータサービスジャパンに勤務した後、ソラコムを起業されたと聞きました。アメリカの大学院でも学ばれたと聞いています。キャリアを築かれる上で、何かビジョンをお持ちだったのでしょうか。

玉川:最初から明確なビジョンがあったわけではありません。ただ、大学生の頃から、自分が好きなこと、興味があることで世の中に貢献したいとはずっと思っていました。とりわけITテクノロジーに強い興味があったので、まずはIBMの基礎研究所に入りました。その後は目の前にあること、興味があることにひたすら取り組んできたという感じですね。

アマゾンデータサービスジャパンではAWS(アマゾンウェブサービス)の立ち上げにも関わりました。アマゾンの次期CEOに就任するアンディ・ジャシー氏と一緒に働いていた時期もあります。その後、ソラコムを起業した時に初めて、今まで自分がやってきたことがすべてつながったと感じました。スティーブ・ジョブズがスピーチで語っていた「Connecting the dots(コネクティング・ザ・ドッツ)」ですね。

2011年頃 AWSでエバンジェリストとして、全国⾏脚してクラウドを紹介
2011年頃 AWSでエバンジェリストとして、全国⾏脚してクラウドを紹介

吉野:玉川さんがソラコムを創業された2015年当時は、日本ではまだ今以上にデジタル技術の浸透が遅れていたかと思います。現在、日本ではようやくデジタル化のアクセルが踏まれている感がありますが、このような現状をどのように見られていますか。

玉川:日本社会がフルスロットルでデジタル化に取り組んでいることは大歓迎です。ただ何ごとも、ある程度のかたちになるには年月が必要だと思います。例えば、サッカーでも世界大会に出て、いきなり優勝することは難しく、長年にわたる選手一人ひとりの研鑽と、チームとしての強化、世代にわたって選手を育成していく土壌が必要です。それと同じように、GAFAのような巨大企業は、すでにデジタルの世界で20年以上積み上げてきた蓄積があります。彼らと同じ道を歩み、真っ向勝負しても勝つことは難しいでしょう。日本企業ならではの勝ち方、またそのために日本全体での戦略が必要だと思います。

日本における特に大きな課題は、テクノロジーへの深い理解と、業界やビジネスドメインの知見の両方を兼ね備えたチームをいかにつくるかです。また歴史ある日本企業の中には、これまでの成功体験が逆にDX化の障壁となっているような企業もあるようです。その矛盾をいかに乗り越えるか。

多くの企業はそのために今、必死で知恵を絞り、試行錯誤しています。そうした流れのなかで、大企業での経験豊富なシニア層が起業したり、大企業とスタートアップがオープンイノベーションで手を組む事例が増えたりしていることは、よい傾向なのではないでしょうか。

(写真左)2015年9⽉ 創業した当時のオフィスで、SORACOM Airの発売を記念して、ソラコムCEO⽟川氏(右)とCTO安川氏(左)∕ (写真右)2015年9⽉30⽇ 発表と同時に、⽇経BP主催のITproEXPOに⼤規模ブースを展開、⼤きな反響を得た
(写真左)2015年9⽉ 創業した当時のオフィスで、SORACOM Airの発売を記念して、ソラコムCEO⽟川氏(右)とCTO安川氏(左)∕
(写真右)2015年9⽉30⽇ 発表と同時に、⽇経BP主催のITproEXPOに⼤規模ブースを展開、⼤きな反響を得た

「テクノロジーの民主化」に込められた想い

吉野:ソラコムは「テクノロジーの民主化」をミッションに掲げていらっしゃいますね。このようなミッションを掲げるには何かきっかけがあったのでしょうか。

玉川: AWSがサービスとして大きくなり始めた頃、ある投資家から「AWSはスタートアップへの投資トレンドを変えた」と言われたことがあります。AWSが登場する前は、起業家がIT系ビジネスを始めるにはデータセンターと契約し、ハードウェアを揃えるだけでも6,000万円程度は必要でした。その資金を調達するだけでも1年近い時間がかかり、その間に斬新なアイデアも陳腐化してしまう。新しいビジネスを始めるにあたって、そんなハードルとジレンマがあったんです。

しかし、AWSが登場したことで、アイデアさえあれば、資金がなくてもスモールスタートできるようになりました。それによって投資スタイルも「6,000万円を数社にではなく、600万円を数十社に」といったスタイルに変わっていきます。それだけの可能性を秘めた起業家が、世の中に増えていったのです。

吉野:まさに「テクノロジーの民主化」を象徴するような例ですね。

玉川:かつては今より、 ITテクノロジーにアクセスできる企業や人と、それができない人との情報格差が大きかった。研究所や大企業に所属しないと使えない技術もたくさんありました。AWSは所属企業に関係なく、誰でもオープンに使えることが大きな魅力だと思いましたし、自分がAWSの立ち上げに情熱的に取り組めたのも、テクノロジーをより多くの人に使っていただける点に非常に共感していたからです。

ですから、ソラコムでも「テクノロジーの民主化」をミッションに掲げ、大企業でなくても気軽にIoTソリューションが使えるプラットフォームを提供することにしました。創業当初と比べると、テクノロジーの民主化は進んだようにも思いますが、IoTがカバーする領域は広く、お客さまによってニーズもさまざまです。それに応えるには、やるべきことはまだまだ膨大ですね。登れば登るほど「この山は高いぞ……!」とわかってきた感じです(笑)。

SORACOMはloTの「つなぐ」を簡単に
          
2015年10⽉ より多くのユーザーに知っていただくため、次々にユーザー向けイベントを企画、⾃らサービスを紹介し、直接ユーザーのニ ーズを聞いてまわる。ユーザーからのフィードバックを基に、翌年2016年1⽉には新たに4つのサービスを発表。その後もユーザーリクエス トから数多くのサービス‧機能が⽣まれている。
2015年10⽉ より多くのユーザーに知っていただくため、次々にユーザー向けイベントを企画、⾃らサービスを紹介し、直接ユーザーのニ ーズを聞いてまわる。ユーザーからのフィードバックを基に、翌年2016年1⽉には新たに4つのサービスを発表。その後もユーザーリクエス トから数多くのサービス‧機能が⽣まれている。

デジタル化が遅れている業界や分野にこそチャンスが眠っている

吉野:IoTは今、社会のあらゆる分野に広がっていると思うのですが、なかでも玉川さんが注目している最新の事例を教えてください。

玉川:御社と取り組んでいる「IoT SELECTION」でも引き合いが多いのが、IoT電球の「HelloLight」です。見守り・防犯サービスとして利用できるので、高齢化が進んでいる現在、非常にニーズの高いサービスだと思います。

市場最もシンプルな見守り・防犯デバイスHelloLight
          

「IoT SELECTION」とは別の事例でいうと、ある大手ガス会社さんの取り組みがあります。弊社と共同開発したスマートメーターを80万台近く設置し、各ご家庭のガスメーターをオンライン化。リアルタイムでガスの使用量が分かるようにし、ガスボンベを運ぶ頻度を減らすなど、効率化を図っているような事例です。これまでのガス業界全体のあり方を変革するような取り組みです。

吉野:デバイスひとつで既存業界のあり方を変えていけるのは、IoTの強みでもあり、すごいところですね。

玉川:はい。日本にはデジタル化が浸透していない業界や分野がまだたくさんあります。そこには逆に、まだ誰も発見していないチャンスが眠っています。

今後、最新テクノロジーを誰もがより簡単に使えるようになれば、デジタル化のハードルが下がり、テクノロジーの新たな活用法なども広がっていくでしょう。それによってビジネスのあり方が根本的に変わり、新しい価値が生まれることもあるはずです。とりわけエネルギー、製造業、一次産業、地方自治体にはそのようなチャンスが多いと思います。

サブスクリプションというビジネスモデルは、サステナビリティにも通じる

吉野:ところで、御社が社員の働き方の指針として定めている15のリーダーシップステートメントは素晴らしいなと思いました。そのなかでも「一緒に働いて楽しい人に」という“Likability”の項目には非常に共感しました。

玉川:行動指針のなかに“Likability”のようなものを掲げている会社は珍しいかもしれませんね。

我々はオープンなプラットフォームを多様な企業に使っていただき、イノベーションを起こしていただくことを目指しています。そのようなオープンなサービスを提供している会社の人間が、とっつきにくい人間であってはいけないと思うんです。だからこそ、社員には「この人とまた会いたい」「この人と働きたい」と思わせるような人であってほしい。そんな想いが込められています。

吉野:さまざまなお客さまとのお付き合いがある東京センチュリーにも、非常に参考になる考え方です。

玉川:ソラコム側から言わせていただくと、東京センチュリーさんのように、リースといった“モノ”を介在させた金融機能を長年に渡り提供されてきた経験とノウハウは、協業するにあたり大変ありがたいものでした。

例えば、お客さまがIoTソリューションを導入するうえで、常々課題だったのが初期導入時のコストやリソースがかかることでしたが、サブスクリプションという形をとることでそうしたハードルを大きく下げることができる。しかも、IoT SELECTIONにラインナップしているソリューションは、すでに実証済みのもので購入していただくとすぐ導入することができるものです。また、ニーズがなくなれば解約をすればよいことであり、設備を使い捨てることはありません。そういう意味でリースやサブスクリプションというビジネスモデルは、サステナブルな社会を実現するうえでも、非常に重要だとあらためて感じました。

「IoT SELECTION connected with SORACOM」記者会見にて
「IoT SELECTION connected with SORACOM」記者会見にて

吉野:今後、単純に融資するだけのファイナンスの分野は、世の中的にもどんどん縮小していくと思います。そのような流れのなか、当社としては従来のリースの仕組みをアップデートしたり、御社のようなIoTサービスやサブスクリプションサービスを支えたりする“黒子”的な存在としての役割を果たすことも重要だと捉えています。

テクノロジー分野や環境領域など、新しいビジネスや産業が今、社会にどんどん生まれているので、東京センチュリーとして、それらとどう関わり、どう価値を生み出していくのか。そのための戦略を考えるのも、私たちの重要な任務です。

玉川:東京センチュリーさんはSDGsやサステナビリティに関する取り組みにも熱心ですが、その点にも非常に共感しています。

昔のスタートアップは、サステナビリティは二の次で、どちらかというと成長圧力のほうが強かったのですが、ここ数年でそうしたトレンドも変わってきています。スタートアップにもSDGsやサステナビリティの視点が不可欠になっていますよね。提供しているSIMカードのプラスチック量を減らすなど、ソラコムもやれるところから始めていきたいです。このようなサステナビリティに関することについても、ともに進めていくことができればうれしいです。

吉野:今回、玉川さんからお話を伺い、根底に一貫したポリシーや哲学を持っておられることに深く感銘を受けました。業種は異なるものの、企業として目指している方向性はまったく同じだとも感じました。一緒にやれることはまだまだたくさんあるかと思いますので、これからもぜひ、一緒に成長していけたらうれしいです。今日はどうもありがとうございました。

⽟川憲(たまがわ・けん)

株式会社ソラコム 代表取締役社長

1976年大阪府生まれ。東京大学工学系大学院機械情報工学科修了。米国カーネギーメロン大学MBA(経営学修士)修了、同大学MSE(ソフトウェア工学修士)修了。日本IBM基礎研究所を経て、アマゾンデータサービスジャパンにエバンジェリストとして入社。日本のAWSクラウド事業立ち上げを技術統括としてサポートした後に、2015年株式会社ソラコムを起業。

ウェブサイト:https://soracom.com/

吉野康司(よしの・やすし)

専務執⾏役員 経営企画部⾨⻑補佐 兼 DX戦略部長

長年、東京センチュリーにおいて国際事業を担当、特に東南アジアを中⼼にデジタルビジネスを推進。その知見を活かし、2020年度より東京センチュリーのDX推進を統括。

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