INNOVATION

【実践】未来のための“循環型ビジネス”は、こう作る。サーキュラーエコノミー最前線

Jul 6, 2022

社会の関心事になりつつある「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」。 この言葉がトレンドになるずっと前から循環型のビジネスモデルを体現してきたのが、リース会社大手の東京センチュリーだ。 2016年には社名から「リース」を外し、領域を限定せずに新規事業を推進。サステナブルなビジネスモデルを進化させ続けている。

ここではそのモデルケースとなる3つの事業を通じ、未来のための“循環型ビジネス”の作り方に迫る。

(制作:NewsPicks Brand Design)

ホテルインディゴ軽井沢

Case 01.
地域経済の循環を生むホテル

──「ホテルインディゴ軽井沢」開業に至る経緯を教えてください。

中居:ホテルインディゴ軽井沢の開業は、近い将来、本格的なホテル事業に乗り出すための布石です。

──その布石は、将来的にどこにつながるのでしょうか?

現時点での最大のマイルストーンは、三菱地所様とご一緒している「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」です。

2027年度竣工に向けて開発中の東京駅前常盤橋プロジェクトで、完成後は東京センチュリーも三菱地所様と共にホテル経営に携わる予定です。

ただ、これまで私たちはホテル事業に投資した経験のみで、経営や運営のノウハウは持っていません。そこで、来る2027年度に向けて自社グループに知見を溜めていくべく、ホテルインディゴ軽井沢の開業に合わせて、経営を担う子会社も設立しました。

東京センチュリー執行役員副社長・中居陽一郎氏

中居陽一郎(なかい・よういちろう)

東京センチュリー株式会社 執行役員副社長 スペシャルティ営業第一部門長 兼 スペシャルティ営業第二部門長

1983年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ証券市場営業G統括部長、新生証券取締役副社長を歴任し、2011年に東京センチュリーリース(現東京センチュリー)入社。常務執行役員 不動産ファイナンス部門長、専務執行役員を経て、2022年6月より現職。


──なぜ従来のように運営をアウトソースせず、自らホテル経営に乗り出すリスクを取られたのですか?

やはりお客様に喜んでいただくには、ハードだけでなく、接客やレストランのサービスなども含めたソフト部分を手がけていかなければと悟ったのです。

また会社全体としても、これまでの金融機能の側面が強いリース会社から、自ら事業やサービスを手がけ、新しいマーケット創出を目指す方向へと舵を切っています。

こうした背景もあり、投資だけでなく経営にも踏み込んで、自らサービスの提供者として付加価値を作っていこうと考えました。

──そのパートナーとして「インディゴ」というホテルブランドを選んだのはなぜですか?

グローバル対応と地域の独自性という2つの観点からです。

コロナで停滞したとはいえ、観光業でインバウンド需要は無視できません。グローバルな知見を持つ海外のホテルチェーンと組むのが最善と考えました。

別荘地として西洋の文化や芸術を取り入れてきた軽井沢。その個性を随所に感じられるホテルを目指したという。建材や食材まで、可能な限り長野県産にこだわる。(撮影:吉見謙次郎/スタジオバウハウス)
別荘地として西洋の文化や芸術を取り入れてきた軽井沢。その個性を随所に感じられるホテルを目指したという。建材や食材まで、可能な限り長野県産にこだわる。(撮影:吉見謙次郎/スタジオバウハウス)

なかでもインターコンチネンタルホテルズグループの「インディゴ」に惹かれたのは、地元の魅力を“ネイバーフッドストーリー”としてデザインや演出、食事などに反映するというコンセプトです。

建設前から自治体や地元のみなさんとも話し合い、軽井沢のホテルとしてあるべき姿を模索しました。そのなかで町長からは「食材や雇用の点からも、ぜひ地域経済に貢献してほしい」というご要望がありました。

プレオープン状態の現在(※取材時点)は、従業員が80名ほど。今後も地元の方を中心に採用を進め、雇用を創出していきます。ホテルインディゴが大切にしているネイバーフッドストーリーを体現するような地元スタッフを増やしていく見込みです。

──軽井沢のような豊かな自然が魅力のエリアでは、大規模なホテル開発は歓迎されないケースもあります。

たしかに、企業が強引に開発を進めたために地元の方々と対立構造が生まれてしまうケースは少なくありません。

しかし、今回のように地域の方々と丁寧にコミュニケーションを取りながら共生の道を探れば、環境と経済を両立することは可能だと思っています。

まさに軽井沢の場合は、自然保護も欠かせない視点です。ホテルインディゴ軽井沢の建材には、伐採期を迎えた長野県のカラマツを多く使い、使用した分に応じて新たに植林しています。

ホテル建設前に生えていたモミジやケヤキは、可能な限り敷地内で移植。ホテルのシンボルツリーとして、お客様にも親しまれている(撮影:吉見謙次郎/スタジオバウハウス)
ホテル建設前に生えていたモミジやケヤキは、可能な限り敷地内で移植。ホテルのシンボルツリーとして、お客様にも親しまれている
(撮影:吉見謙次郎/スタジオバウハウス)

なお、今回は鉄筋コンクリートの割合を大幅に減らし、なるべく木造を主体にしています。これにより建築資材を製造する際の炭素放出量を削減するほか、木材の内部に炭素を固定することでも、炭素放出量の抑制に貢献しています。

ホテル事業にも生きる幅広い顧客基盤

──ホテルインディゴ軽井沢は、主力であるリース事業とはまったく異なるチャレンジですね。

実はそうではありません。リース業で培われたネットワークが、ホテル経営にも大いに生きています。

たとえば、従業員のユニフォームは、株主でもある伊藤忠商事様のグループ会社であるユニコ様にデザインから製作までを担当いただき、客室リネン類のクリーニングは取引先の白洋舍様にお願いしています。インテリアやコーヒーに至るまで、あらゆる部分に私たちの顧客の力をお借りして成り立っているんです。

未経験のホテル事業で発揮されたのは、幅広い顧客基盤を持つ私たち本来の強み。広い視野で多角的なビジネスを手がけてきた総合力が、新規事業を始める際にも役立っているのだと思います。

──今後もホテル経営を拡大していくのですか?

ホテルインディゴ軽井沢の開業以降、地方の企業からホテル誘致に関するお問い合わせが増えました。地元企業と連携し、地域の魅力を発信するホテルを各地に展開していく可能性はあると思います。

それには地元の理解が不可欠です。地元住民のみなさんや行政と一緒にその土地ならではのホテルを作り、地域貢献につなげる。同じ思いを共有できるパートナーとでしたら、ぜひ協業を検討したいですね。

MIRAI-LABOとの資本業務提携

Case 02.
EVバッテリーの無駄をなくして付加価値に

──EVバッテリー(リチウムイオンバッテリー 以下、LIB)の診断評価・リユース事業などを展開するMIRAI-LABOとの資本業務提携には、どのような狙いがありますか?

大杉:東京センチュリーグループのオート事業の機能拡充です。

私たちは現在、70万台強の車両を管理してオート事業を推進していますが、EVは全体の1割にも満たない台数でしかありません。今後、EVの社会的普及に伴い、この割合を加速度的に高めていく方針です。

その際に重要なのが、中古売却などの出口戦略の有無。導入コストの低減に大きな影響を及ぼす「残価(※)」を左右するからです。

※残存価額。リース契約満了時における車両の想定時価。契約時に設定する。

なかでも課題は、EV原価の多くを占めるLIBの評価と再利用可否の判断。そこで、LIB診断・リユースにおいて独自の技術とノウハウを持つMIRAI-LABOと協業すれば、EVリースの付加価値を高めていけると確信しました。

東京センチュリー常務執行役員・大杉雅人氏

大杉雅人(おおすぎ・まさと)

東京センチュリー株式会社 常務執行役員 オート営業推進部門長

1985年伊藤忠商事(自動車本部)入社、2016年同社執行役員 自動車部門長。2019年東京センチュリー入社。2020年同社常務執行役員オート営業推進部門長および日本カーソリューションズ取締役副社長等に就任、現在に至る。


──現状では、何がLIBの再利用を阻んでいるのでしょうか?

EV普及台数の少なさに加えて、使用済みのLIBを回収して状態を評価し、市場に再投入していくビジネスモデルが確立されていないことが一因と考えています。

本来LIBは、車載用としての役目を終えた後も、蓄電をはじめ、さまざまな活用の余地があります。

──そこで使用済みLIBの「評価」をMIRAI-LABOが担うわけですね。

そうです。新車時点のバッテリー容量を100%とした場合、充填率が70〜80%まで低下すると、使途に窮するケースが散見されます。MIRAI-LABOはこういった一定レベル以下に劣化したLIBを、より細かなモジュール単位で評価できます。

劣化の進度に応じて定置型蓄電池や自律型街路灯用のバッテリーとして再製品化したり、さらに劣化が進んでいるものはレアメタル用と使い分けたりして、廃棄を極力減らし、LIBのバリューアップを図っています。

正しい評価と多様な“出口”による市場創出

──環境に配慮したEVのはずが、実はバッテリーが活用しきれていないのですね……。

用途の見つからない劣化したLIBが、メーカーの倉庫に大量に眠っているという話も聞きます。

大杉雅人
          

LIBは希少かつ多様な使い道があるにもかかわらず、これではもったいないですよね。

また、LIBを山積みにして管理を誤ると発火リスクがあることからも、早く市場に再投入していくことが望ましいのです。

MIRAI-LABOにはLIB活用のノウハウがあります。これに東京センチュリーの事業やネットワークを組み合わせれば、MIRAI-LABOがLIBの“使い道”を、我々はその“出口”を用意して、LIBの好循環が作れると確信しています。

今後はMIRAI-LABOの技術をさらに生かせるように、お客様のニーズに応じたさまざまなスキームを確立していきます。

EVバッテリーの活用サイクル
          

──LIBの再利用から、どのような自社のビジネスの広がりを見込んでいますか?

LIBの再利用はEVビジネス強化の根幹を担うものです。出口戦略を描けるようになることで、 適切な残価設定をはじめ、お客様に適切な導入コストでご提案ができるようになり、EV事業拡大が期待されます。

ここを起点に、充電サービスや電力需給調整市場での活用など、エネルギーマネジメントへのさらなる発展も視野に入るでしょう。

また、リース期間中のサービス拡充によって、お客様本位のさらなる付加価値の提供が可能になり、本当の意味でのマーケットインが実現します。

我々はオートリース以外にも、さまざまな分野の企業様とつながりを持っています。LIBを活用して再製品化された商品の展開や太陽光発電所での蓄電池の活用など、東京センチュリーの総合力で再利用の間口を広げるポテンシャルが十分にあります。

大杉雅人
          

──将来的に幅広いインパクトが見込めそうですね。

従来は車を中心にハード/プロダクツアウトのビジネスに終始していました。しかし、今後はオート分野の幅広い顧客基盤を武器にソフト/マーケットインへと収益基盤をシフトできなければ、生き残れないと考えています。

その意味では、オートという古い概念は捨てねばならないでしょう。環境への配慮に軸足を置きながら、お客様のさまざまなニーズに対して、IT/DXを駆使した付加価値の創造が不可避です。

今回のLIB診断・再利用を皮切りに、東京センチュリーが培ってきた強固なネットワークを生かしつつ、聖域を設けずに自由な発想でさらにチャレンジしていきます。

里山保全活動への参画

Case 03.
市場原理で里山を守る
「生物多様性オフセットバンキング」

──昨年から東京センチュリーが参画した「里山バンキング」とは、どのような環境保全活動なのでしょうか?

中島:日本初の「生物多様性オフセット」の構築を目的とした取り組みで、現在は千葉県印旛郡酒々井町に広がる里山で実証実験を行っています。

我々の事業も含め、あらゆる経済活動は温室効果ガスの排出や森林伐採によって、環境負荷をかけてしまう側面があります。

こうした経済活動によるマイナス面を、環境保全活動でトレードオフする。つまり、マイナス影響を相殺するのが「里山バンキング」の仕組みです。

東京センチュリーエグゼクティブ・フェロー・中島弘一氏

中島弘一(なかじま・こういち)

東京センチュリー株式会社 エグゼクティブ・フェロー

1976年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ銀行執行役員、みずほ証券常務執行役員を経て、2009年に東京センチュリーリース(現東京センチュリー)入社。取締役執行役員副社長として、船舶・航空機・不動産等を中心としたスペシャルティ営業部門を設立・拡大してきた。2021年4月より現職。


実は、こういった「生物多様性オフセット」の考え方は海外の先進国では当たり前に根づいています。

たとえば工場建設などを行う際に、環境アセスメントの結果、そこに絶滅危惧種がいると判明したら、中止を求められます。ただし、同様の環境を新たに構築できれば、開発が認められる。

アメリカでは法整備され、環境を復元する専門の会社もあるなど、ビジネスとして成り立っています。

──とても意義のある活動ですが、リース業を営む東京センチュリーが手がけるのは少し意外に感じます。

リース業も生態系の保全も発想は同じで、どちらもサーキュラーエコノミーの延長線上にあると私たちは考えているのです。

──どういうことでしょうか?

リース業というのは、単に物を貸し出すだけではなく、新品の状態から再利用し、廃棄するまでの一連のサイクルを管理しています。

つまり、サーキュラーエコノミーを体現するようなビジネスモデルと言えるんです。

中島弘一
          

航空会社に貸し出す飛行機であれば、旅客機としての役目を終えて貨物機に転用されるケースがあります。

その際、撤去した客席シート等の設備はパートナー企業と組んで再利用。さらに退役した機体の部品まで再利用しています。

会社に貸し出すパソコンや携帯電話も同様です。このサイクルはどこかが切れれば成り立ちません。これって生態系も同様ですよね。

──リースも生態系も循環である、と。東京センチュリーの事業の場合、どういった環境負荷が課題なのでしょうか?

私たちは約70万台の車両、100隻の船舶、400機超の飛行機の事業に関与しています。当然、これらが稼働することで、温室効果ガスを排出しているわけです。

また、再生可能エネルギー事業も東京センチュリーの主力ビジネスです。現在は全国100カ所を超える太陽光発電所を展開しています。

私たちは太陽光パネルの設置に水上スペースを活用するなど、できるだけ環境負荷の少ない方法も模索していますが、その何割かは森林を切り開いて整地せざるを得ません。

再生可能エネルギーとして注目される太陽光発電だが、設置のための整地による環境負荷のほか、パネルの大量廃棄も社会問題となりつつある。
再生可能エネルギーとして注目される太陽光発電だが、設置のための整地による環境負荷のほか、パネルの大量廃棄も社会問題となりつつある。

「環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献」することを経営理念に掲げながらも、我々自身もどこかで生態系の循環を寸断しているのではないか、という課題感がありました。

そんなとき、日本における生物多様性バンキングの提唱者である田中章教授(東京都市大学環境学部環境創生学科)に出会いました。

実際に千葉県の酒々井町へ足を運び、椿ファームと実証実験を行っている里山を目にして、今回の参画を決めました。

日本初の生物多様性オフセットの実証実験を行う「椿TC里山バンク」。43ヘクタールの土地の保全と地域経済活性化の両立を目指す。
日本初の生物多様性オフセットの実証実験を行う「椿TC里山バンク」。43ヘクタールの土地の保全と地域経済活性化の両立を目指す。

経済界全体を巻き込み、よりサステナブルな仕組みに

──日本の里山には、どんな課題があるとお考えですか?

地方の里山の多くは危機的状況です。地方では、手入れされずに伸び放題の竹林を目にします。竹が茂ると森を作る下草が育たず、いわゆる“里山の風景”が失われていくのです。

過疎化や高齢化、コンビニ等による利便性の高まりで、管理されなくなった山は荒れ、生態系が崩れてしまう。循環のサークルがどこかで途切れてしまったんですね。

──そこで企業が介入し、循環のサークルを守っていく、と。このプロジェクトは、CSR活動の一環なのでしょうか?

はい。現時点では、経営理念である「循環型経済社会の実現」に向けた活動という位置づけです。ただ、将来的には事業化を視野に入れています。

なぜなら、私たちだけでできる環境保護活動には限界があるからです。

田中先生も「生物多様性を守り続けるには、経済活動に紐づく仕組み化が不可欠」というポリシーをお持ちです。このような田中先生の考え方が、私たちが今回のプロジェクトでご一緒させていただく決め手となっています。

では、どうすればビジネスになるのか。どういった企業と協業すべきか。現在はここを模索中です。

まずは私たちのパートナー企業や取引先のネットワークを生かして、生態系のオフセット実現に向けた協議会の設立を目指します。

中島弘一
          

私たちの顧客には、日本有数の企業が多数いらっしゃいます。みなさんとコンセンサスをとり、企業間で里山バンキングの認知を広めたい。さらに、国に対して法制化を働きかけていく必要もあると考えています。

当面は一緒に研究活動をするようなところから始め、少しでも多くの企業に参画してもらえる道筋を見つけたいと考えています。

もちろん、環境保全活動はあらゆる企業が注力しています。私たちのパートナー同士が手を取り合い、経済界全体に広がる仕組みを作り、より持続可能性のある大きな循環を実現できたらと願っています。

※記事の内容、肩書などは掲載当時のものです

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