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産業医が教える、健康経営のヒント―企業が役職員のためにできること

Sep 14, 2022

ビジネスパーソンであれば一度は耳にしたことがある「健康経営®」。とはいえ、「なぜ、企業が健康経営に取り組むのか実はよく分かっていない」「健康な自分には関係ないだろう」あるいは「健康経営の推進役に指名されたが、何から始めて良いのか困っている」といった、さまざま疑問や思い、不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、健康経営が求められる背景や推進のために必要な考え方、さらにはコロナ禍における健康面の変化まで、当社の産業医を務める森秀和先生に人事部(健康経営推進担当)の小﨑正人と神村昌代がお話をうかがいました。

※本インタビューは2022年7月に実施しました。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

Why?―― 一人ひとりの健康が経営の安定に

小﨑:今、たくさんの企業が健康経営に取り組んでいますね。

森先生(以下、敬称略):労働人口が減って役職員の高齢化も進むなか、慢性的な人手不足により一人あたりの業務負担は大きく、社会保険料の負担も増えています。
働く人の心身の不調とそれに伴うパフォーマンスの低下は、いまや本人やご家族だけの問題ではなく、企業にとっても業績に影響を及ぼす一因になりかねません。役職員の健康を守ることが経営の安定につながり、企業が社会的責任を果たし続ける原動力になる。健康経営は、このような企業の意思を実践によって示す取り組みです。

          

神村:いつ頃から企業は健康経営を意識するようになったのですか?

:2016年に経済産業省による「健康経営優良法人認定制度」が始まりました。また、2018年には働き方改革関連法が成立。この頃を境に健康経営の取り組みが活発になったと記憶しています。

●用語解説 健康経営優良法人認定制度

地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標とする。
出所:経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

健康経営が推進される背景には複合的な要因がある、と語る森秀和先生
健康経営が推進される背景には複合的な要因がある、と語る森秀和先生

Hоw?――健康経営を進めるカギは、経営層からのメッセージと…

小﨑:健康経営を進めるためにもっとも大切なことは何でしょうか?

:あえて一つだけ挙げるなら、やはり社内における「意識の醸成」です。そのために、経営層の方々による直接的な発信が効果を発揮するのではないでしょうか。皆さんが抱く「健康経営がなぜ必要なのか?」「何が変わるのか?」といった問いに対し、まずは経営層が明確な答えとなるメッセージを発することによって、担当部署も施策を展開しやすくなりますし、役職員の方々は健康経営を“自分事”として受け止め、積極的に関わろうとする気持ちが芽生えてきます。

神村:健康経営を“自分事”にすることはすごく大切ですよね。私も担当として「どうすればいいのか」といつも考えています。施策を展開するにあたってアドバイスをいただけますか?

人事部の神村は、より効果的な健康経営推進施策の展開方法を模索
人事部の神村は、より効果的な健康経営推進施策の展開方法を模索

:健康経営の大切さをわかりやすく、具体的に示すには工夫が必要です。数値データを明示することが有効な手立てになるでしょう。例えば、健康経営の進捗をはかる指標の一つに「プレゼンティズム」の測定が設けられているのですが、測定された数値が施策の前後でどのように変化したのかを明らかにすることで、多くの方々に「なるほど、こういう効果があったのか」と感じてもらえるかもしれません。
飲酒や喫煙の習慣を見直すことで、生活にどのような好ましい変化が表れたのかを、個人の事例を通して紹介するのも良いでしょう。実体験に勝るものはありませんし、共感を得られれば「自分もチャレンジしてみよう」と、生活改善のモチベーションにつながるはずです。

●用語解説 プレゼンティズム

出勤はしているものの健康上の理由によりパフォーマンスを発揮できず、業務効率が低下している状態。

:暴飲暴食であれ喫煙であれ、心身に好ましくない習慣を誰かが無遠慮に、一方通行で否定することは余計な誤解や摩擦を生むだけです。その人なりの理由や原因があると受け止め、寄り添う気持ちで少しずつ、共に改善を目指す姿勢を心掛けるべきでしょう。健康の尺度は人それぞれ。押しつけ過ぎず無理をせず、改善によるメリットを分かち合いながら進めることが大切ですね。

Case――コロナ禍がもたらした、ビジネスパーソンへの心身の変化とは?

小﨑:コロナ禍は今も私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。人々の体と心には、どのような変化があらわれているのでしょうか?

コロナ禍における役職員のストレス軽減は、企業にとっても大きな関心事の一つ(写真奥右/人事部 小﨑)
コロナ禍における役職員のストレス軽減は、企業にとっても大きな関心事の一つ(写真奥右/人事部 小﨑)

:リモートワークの定着により、日々の運動量が極端に少なくなったと感じている方が多くいる印象です。人に会わない環境に慣れて自制がきかなくなり、食生活が乱れて生活習慣病が進行してしまうといったケースも見られます。
ストレスは体温を上昇させる作用があるため、毎日のように体温をはかる→体温が少し高いだけで不安になる→その不安がストレスとなって脳が疲労し、体温がさらに上がる→感染を疑う、対応に迫られる…。といった悪循環に悩まされる声も届いています。

神村:コロナ禍のニューノーマルは、日々のコミュニケーションにも支障をきたしています。

:同じ空間にいれば軽く声をかけるだけで済むことが、オンライン上であれば時間を調整したり、ミーティングを設定するための依頼の文面を考えたりと、これまで感じることのなかったストレスが蓄積される環境下にあると言えますね。

小﨑:それらのストレスを軽減するためにはどうすれば良いのでしょうか?

:曜日や時間帯を決めるなどして、定期的にミーティングを開くことが大切です。そのミーティングは業務の進捗を共有するような場だけにするのではなく、むしろ雑談に重きを置いた方が良いのかもしれません。能力や経験に加えて、お互いの性格や好き嫌いもわかり合えれば、より確かな信頼関係を築くことができるでしょう。

          

Develоp――何がどう違う?健康経営とウェルビーイング経営

神村:健康経営の発展形として「ウェルビーイング経営」という考え方も注目されています。この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?

:健康経営は、一人ひとりの体と心の健康を守る具体的な施策を、企業として戦略的に打ち立てようとする考え方が根底にあります。一方、ウェルビーイング経営は、心身の健康に加えて社会的にも満たされた、より充実した人生を送るためにはどうすればいいのか、といったところにまで踏み込んだ考え方です。
心身の健康と「社会的に満たされた状態」は切り離せるものではなく、相互に影響を及ぼしています。金銭的なトラブルや育児・介護の問題、あるいは人間関係やこれからのキャリアについてなど、役職員の方々が抱える悩みはさまざまです。こういった方々に対し、社内の関連部署と連携し、ときにはしかるべき外部機関を紹介するなどの対策も講じながら、悩みを解消できるよう努めることが産業医としての業務領域だと認識しています。

          

小﨑:心身の健康などの悩みについて先生に気軽にご相談しても、お話を聞いていただけるということですね。

:もちろん歓迎しますよ。遠慮も気兼ねもなく悩みごとを打ち明けてください。一緒に解決していきましょう。

Future――職場の雰囲気や一人ひとりの表情に成果はあらわれる

小﨑:東京センチュリーは、2022年3月に「健康経営基本方針」と本方針に沿った具体的な取組みを制定しました。制定までに要した約2年の歳月では、先生にもたくさんのアドバイスをいただき、一緒に作り上げてきました。いくつかの施策が動き出している今、先々に渡って健康経営を続けていくためには何が必要になってくるのでしょうか?

:事業展開と同じ感覚で絶えず目標を設定し、達成感を共有することが大切です。施策による生活習慣の改善が統計で証明されたり、健康経営優良法人に認定されたりといった結果は、実にわかりやすいものと言えるでしょう。
ただ、これらはもちろん重要ですが、数値的なデータや外部からの評価にとらわれてばかりでは本末転倒と言わざるを得ません。

神村:成果を実感できる変化が他にもあるということですか?

:はい。健康経営を進める企業の方々が、どんなときにその成果を強く感じるのか。産業医としてのこれまでの経験で言えば、「従業員の表情が明るくなった」「笑い声が聞こえるようになった」と実感できる瞬間にこそ、何よりの達成感があるようです。

神村:現場で直に感じる変化は、確かにインパクトがありますね。eラーニングによる情報発信など、東京センチュリーにとって馴染みのある手法を活用しながら、当社グループのすべての皆さんが健康経営に積極的に向き合っていただけるよう、体制づくりに励んでいきたいです。

小﨑:チームワークの良さは東京センチュリーの強みの一つ。当社では社長が健康経営に取り組むことを表明しています。推進担当として、役職員一人ひとりが健康経営に対する理解を深められるよう、様々な施策を全力で進めていきます。森先生、引き続きよろしくお願いいたします。

:この記事が公開される頃(2022年9月)は、まだ残暑が続いていることと思います。食事も睡眠も、体調管理にはくれぐれも気をつけて、健康経営をこれからも共に推し進めていきましょう。

森先生と東京センチュリー人事部 健康経営推進担当(小﨑・神村・宮澤・髙城)
森先生と東京センチュリー人事部 健康経営推進担当(小﨑・神村・宮澤・髙城)

森 秀和(もり・ひでかず)

産業医

産業医科大卒業後、同大学心療内科医として勤務。2020年度より東京センチュリーを担当。18年以上に渡る心療内科・精神科医療の経験と、産業医としてIT業界からエンターテインメント業界まで幅広く活動してきた経験から、メンタルヘルス分野における深い知見と柔軟な対応力を持つ。労働衛生コンサルタント、日本医師会認定産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本心身医学会・日本心療内科学会合同心療内科専門医、特定社会保険労務士。

小﨑 正人(こさき・まさと)

東京センチュリー株式会社 人事部 ダイバーシティ推進室 室長

1993年、旧センチュリー・リーシング・システム(現東京センチュリー)入社。2014年4月より人事部に配属され、健康経営の推進に加えダイバーシティ、人権尊重など担当。

神村 昌代(かみむら・まさよ)

東京センチュリー株式会社 人事部

2021年、東京センチュリー入社。前職で培った社会保険制度に関する知識や人事業務の経験を生かし、人事部では健康経営に加えて、育児休業制度の運用実務なども担当。

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