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脱炭素社会の実現に向けた貢献とは?今、注目の「JCM(二国間クレジット制度)」についてキーパーソン2名に聞いてみた

2021年7月14日

世界中で地球温暖化への対応が急務とされるなか、温室効果ガス削減に貢献する日本独自の制度「JCM(二国間クレジット)」が注目されています。東京センチュリーも今、注力して取り組むJCMの概要とこれからの展望について、東京センチュリーにおけるJCM推進の中心人物・青木貴史さんと、JCMの普及・啓蒙に携わる一般社団法人 海外環境協力センター(OECC)の高山和夫さんにお話を伺いました。

東京センチュリーとOECCが今、注力して取り組むJCM(二国間クレジット制度)とは?

一般社団法人海外環境協力センター(OECC)高山さま(左)/東京センチュリー 青木さん

一般社団法人海外環境協力センター(OECC)高山さま(左)/東京センチュリー 青木さん

-東京センチュリーが推進しているJCM(二国間クレジット制度)とはどのような制度なのでしょうか。

青木さん:途上国を中心とした海外の国とパートナーシップを結び、二国間で温室効果ガスの削減に取り組む制度です。例えばパートナー国の企業が脱炭素や再生可能エネルギーの設備を導入する際、日本側が技術や資金を提供します。それによって削減された温室効果ガスを、日本側は「クレジット」として自国の削減目標に活用できる制度です。

高山さん:「クレジット」というといまひとつイメージしにくいかもしれませんが、ポイントに近いかもしれません。例えばパートナー国の企業が自社工場にソーラーパネルを導入する場合、日系企業が代表事業者となって設備導入を行うと、JCMによって最大50%の補助金が出ます。その後、実際に温室効果ガスが削減されたかを継続的に測定し、削減量に応じたクレジットが付与されます。

          

青木さん:JCMが注目される大きなきっかけとなったのは2015年のパリ協定。途上国を含む全ての参加国に温室効果ガスの排出削減を求める画期的な枠組みですが、そこで当時の日本の総理より二国間クレジット制度などを駆使して画期的な低炭素技術を普及させるとスピーチされました。年間の補助金も、現在はJCM設備補助事業だけでも100億円前後に拡大しています。

-高山さんが所属するOECCは、JCMにおいてどんな役割を担っている組織なのでしょうか。

高山さん:環境省の外郭団体から始まり、現在は一般社団法人となっているOECCは、海外でのさまざまな環境事業を推進しています。なかでもJCMは日本独自の制度なので、海外での認知を高めることや、案件の発掘、海外省庁とのやり取り、実際にJCMを行う日系企業のサポートなどに注力しています。

青木さん:東京センチュリーは、今までに8件のJCMのプロジェクトを行いましたが、最初のチャレンジ案件で、関係団体との現やりとりや省庁のアテンド、ネットワークづくりなど、高山さんにはいろいろとサポートいただきました。

フィリピンでJCMを実施した際には、まず高山さんにフィリピン大使館に連れて行ってもらって、そこからフィリピンのエネルギー省や電力会社にネットワークを広げていきました。JCMをきっかけに、そこからまた別の新しいビジネスにつながるのも大きな収穫ですね。

-青木さんは東京センチュリーにおけるJCM推進の中心人物とお聞きしました。なぜJCMに取り組もうと思ったのでしょうか。

青木さん:パリ協定以降、世の中の環境意識が高まっていくなか、営業活動の中でたまたまJCMという制度があることを耳にしたのが最初のきっかけでした。2016年の始め頃、大阪でJCMにまつわるセミナーが開催されるということで参加し、登壇された講師の方にアポイントを取っていろいろとお話を聞いたりしました。当時はまだ事業としてここまで拡大するとは予想していなかったですね。

          

しかし、お客さまにJCMの話をすると、大きなニーズがあることに気づいたんです。かつては企業の多くが「コスト削減」など実利的なメリットを追い求めていましたが、SDGsなどへの世界的な関心の高まりもあり、また2050年のカーボンニュートラル実現を目指す動きもあるなかで、それに向けてどのようなロードマップを引くかが多くの企業の関心事になっている。そのためのひとつの施策として、JCMへのニーズの高まりを感じました。

現在は5人のチームに成長しました。事業として着実に育っている手応えがあるのは、とてもうれしいことですね。

タイのサハグループの工業団地に設置した水上太陽光発電システム

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東京センチュリーが日本初の事業者に選ばれた「JCMエコリース事業」とは?

-2020年からは、リースを活用したJCMの新しい取り組み「JCMエコリース事業」もスタートしたと聞きます。これはどういったものでしょうか。

青木さん:これまでのJCMは、設備の"購入費用"に対して補助金が出ていました。しかし、設備をリースで借りる場合にも補助金が適用されるようになったのです。そのようなJCMエコリース事業の場合は、金利を含むリース料総額の最大10%が補助されます。

高山さん:JCMエコリース事業は、東京センチュリーが日本初の代表事業者となった事業です。リースという形態が認められたことで、パートナー国の多くの企業がよりJCMにチャレンジしやすくなったようにも思います。

          

青木さん:JCMエコリース事業のメリットは大きく2つあります。1つは、初期導入コストを下げられること。リースと補助金の組み合わせで、利用料は年ごと均等に分散されるので、補助金により企業側もコストを抑えてチャレンジしやすくなります。

もう1つのメリットは、導入後のモニタリング期間が短くなること。これまでCO2の削減量といった導入後の効果は、日本の法定対応年数に合わせて、現地企業もモニタリングする必要がありました。この期間は10年、場合によっては17年と長いため、企業側の負担となっていた面もあります。しかしJCMエコリース事業では、モニタリング期間はリース期間とイコールで済みます。5年間のリース契約なら、モニタリング期間も5年ということになります。

-いずれのメリットも、現地企業側のJCMへのハードルを下げることができる。これがJCMエコリース事業の大きなポイントということでしょうか。

青木さん:そうですね。特に途上国の企業が環境への取り組みをより負担の少ない形でスタートできる、ひとつのきっかけになると思っています。そういった意味で、「リース」という形態でも補助金が出るようになったのは画期的なことです。

JCMエコリース事業は小回りが利くといいますか、小さな金額の案件でも進めやすいですし、それによってJCMそのもののさらなる普及にもつながっていくと思うのです。

タイのサハグループの工場の屋根を活用した太陽光発電システム

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高山さん:途上国企業の設備投資コストをいかに捻出するか。これは重要なテーマです。世界中の環境対策に必要な金額は年間30兆円といわれますが、先進国が出せるODA(政府開発援助)の金額は10兆円程度と試算されています。つまり、計算上では20兆円足りないことになるわけですね。

すると、この足りない20兆円は、民間企業が中心となって補っていく必要がある。そういった意味でも、JCMエコリース事業は意義深い取り組みだし、東京センチュリーのような金融・サービス企業が先陣を切ってこうした先進的な取り組みを行うことは、とても重要な一歩になると思います。

JCM(二国間クレジット制度)では"官と民"はもちろん、"民と民"の連携も重要

-お二人が携わったなかで特に印象的だったJCMのプロジェクトはありますか?

高山さん:現在進行中のプロジェクトですが、ある国に電気の通っていない村があり、青木さんと2人で太陽光パネルを導入する計画を進めています。

村には200人ほどの住民が住んでいて、もちろん小さなお子さんもいます。スマホを持っている村民もいるのですが、発電力が乏しい小さな太陽光パネルを用いて充電しています。大きな蓄電バッテリーなどもないため、夜までなかなか電気が持ちません。日が落ちると真っ暗になります。

こうした地域で育った子どもは、明かりがないため満足に勉強ができなかったりもします。十分な教育が得られないことで、職を得るのも難しくなり、貧困のスパイラルが生まれてしまうのです。それを解決するひとつの手段として、この村に大規模な太陽光パネルを導入して電気を通したいと考えました。

青木さん:日本のさまざまなメーカーや工事会社と手を組みながら、ひとつのパッケージを提供するようなプロジェクトになるといいね、と高山さんと2人で話しています。JCMの事業では、"官と民"はもちろん、"民と民"も連携するのが理想形です。

インドネシアで化学工場への吸収式冷凍機導入した際の説明会

インドネシアで化学工場への吸収式冷凍機導入した際の説明会

-最後に、これからのJCMや環境への取り組みについて、お二人のお考えや今後の展望を教えてください。

          

高山さん:JCMのような環境にまつわる事業は、得てして社会貢献と捉えられがちですが、決してボランティアではありません。ビジネスとして成立させるからこそ、長期的かつ継続的に課題を解決していけるのです。企業が環境負荷低減に取り組むことは社会的な使命となっている一方、ビジネスとしていかにそれを成立させれば良いのか、暗中模索している企業が世界にはたくさん存在します。

そのときに、東京センチュリーだからこそできる協力や提案の形は、いろいろあると思うんです。実際にJCMエコリース事業を通じて、それをひとつ具現化できています。特にこれから東京センチュリーの若い社員の方には、ぜひ世界でどのような課題があるか、目で見て、現地にある課題を感じてほしいと思います。東京センチュリーだからこそできること、課題の解決にも積極的に取り組んでいただけるとうれしいですね。

青木さん:東京センチュリーへのご期待の言葉、ありがとうございます(笑)。我々としては、JCMを広めていくと同時に、JCMを通じて関係が生まれた企業のさらなる課題や悩みにも応えていきたいです。

実際、JCMをきっかけに、別プロジェクトの新しい太陽光パネルの導入検討の相談を受けたり、ファイナンス関連の相談を受けたりという事例も生まれています。JCMにとどまらず、世界中の企業の環境に対するアプローチを、包括的にサポートできるような企業になっていけたらと思います。

高山和夫(たかやま・かずお)

一般社団法人海外環境協力センター技術主任。専門分野は国際金融論、外国為替論、気候ファイナンス理論。外資系金融機関や国際協力機構などでの勤務を経て、2015年より現職。

青木貴史(あおき・たかし)

国際プロダクツ部

東京センチュリーのさまざまな部店で海外案件支援に従事。数年前より環境ビジネスに注力し、東京センチュリーにおけるJCM事業の普及・推進の中核となり活躍。

※記事の内容、肩書などは掲載当時のものです

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