Sustainability

日本の普及率は1%未満?! 日本と世界の電気自動車(EV)事情
——東京センチュリーグループのEV普及に向けた取り組みとは?

2022年6月15日

電気モーターを動力源として走行する電気自動車(Electric Vehicle=EV)は、新型の自動車という枠組みを越えて、温室効果ガスの排出量削減や世界のエネルギー問題に大きな変化をもたらすものとして普及が期待されています。

では、EVは日本や世界で現在、どれくらい普及しているのでしょうか? また、今後より普及拡大していくにはどのようなことが必要なのでしょうか? 本記事では、日本と世界のEV普及事情を見ていくとともに、東京センチュリーグループのEVに関連する取り組みについてもご紹介します。

ガソリン車は事実上廃止? 「パリ協定」から「グリーン成長戦略」へ

ガソリン車は事実上廃止? 「パリ協定」から「グリーン成長戦略」へ

          

まずは電気自動車(EV)の普及が推進されている背景について見ていきます。

2015年に「パリ協定(※1)」が採択されて以降、世界は脱炭素社会の実現に向けて大きく舵を切りました。日本でも、2020年10月に菅首相(当時)が「2050年のカーボンニュートラル実現」を宣言し、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」が策定されました。現在、その実現に向けてさまざまな取り組みが動き出しています。そうした取り組みの一つとして、EVの普及推進が挙げられます。

菅首相は2021年1月の施政方針演説で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する(※2)」旨を発表しました。その後、同年6月に公表された改訂版「グリーン成長戦略」には「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことが明記され、事実上、将来的なガソリン車の販売禁止が表明されたと言えます。

今後いっそうEVの普及が見込まれるわけですが、現在の日本と世界の普及状況は具体的にどの程度のものなのでしょうか?

(※1)パリ協定......温室効果ガス排出削減に関する2020年以降の国際的な枠組み。具体的には、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」を長期的な努力目標として掲げている。

(※2)電動車......電気自動車(EV)の他に「燃料電池自動車(FCV)」「プラグインハイブリッド自動車(PHV)」「ハイブリッド自動車(HV)」も含む。

日本のEV普及率はまだまだ低い? 日本の普及状況と今後の展望

日本のEV普及率はまだまだ低い? 日本の普及状況と今後の展望

          

日本のEV普及率の参考になるデータが、一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数(乗用車)」(※3)。このデータによると、2021年の日本の新車販売台数の合算は約240万台で、そのうちEVの販売台数は21,139台。割合にすれば約0.9%と、これは世界各国の普及率と比べても特に低い水準です。

では、なぜ日本ではEVの普及が遅れているのでしょうか?

それには、いくつかの理由が考えられます。たとえば車両価格が高いこと、航続距離が短いこと、充電設備(充電インフラ)がそれほど普及・整備されていないこと、ハイブリッド車の市場競争力が強かったこと、そして国内メーカーで性能と価格面の両方を備えたEVがまだ少ないこと......など。

そうしたなか、2021年12月にトヨタが「近未来に向けてのバッテリーEV(BEV)戦略」を発表したことは注目に値します。これは、2030年までに30車種のバッテリーEVを展開し、年間350万台のグローバル販売台数を目指すというもの。国内最大手の自動車メーカーの参入が、日本におけるEVの普及推進にどのような役割を果たしていくか期待が高まるところです。

(※3)一般社団法人日本自動車販売協会連合会,"年別統計データ「燃料別販売台数(乗用車)」",
http://www.jada.or.jp/data/month/m-fuel-hanbai/

アメリカ、ヨーロッパ、中国それぞれのEV普及率は?

アメリカ、ヨーロッパ、中国それぞれのEV普及率は?

          

次に、世界のEV普及状況と背景事情をアメリカ、ヨーロッパ、中国に分けて見ていきます。

<アメリカ>

全米自動車ディーラー協会(NADA)が発表している「NADA DATA 2021」(※4)によると、アメリカにおける2021年の新車販売台数(乗用車等)は約1,493万台で、そのうちEVが占める割合は約2.9%と、日本よりも普及が進んでいることがわかります。前年2020年の新車販売台数に占めるEV比率1.6%と比べても伸びており、アメリカのEV普及は順調に進みつつあるように見えます。

ただし、アメリカならではの特色として、新たに販売されたEVのうち8割弱を電気自動車専門メーカーのテスラ社が占める一強状態が続いていることが挙げられます。2021年にはテスラ社の時価総額が1兆ドルを超え、EVメーカーのベンチャー企業がアメリカ国内に続々と生まれるなど、EV普及への追い風が吹いているようですが、現状ではテスラの販売台数次第でEVの普及率も大きく左右される状況にあるとも言えそうです。

(※4)National Automobile Dealers Association,"NADA DATA 2021",
https://www.nada.org/

<ヨーロッパ>

欧州自動車工業会(ACEA)が発表している「NEW CAR REGISTRATIONS BY FUEL TYPE, EUROPEAN UNION」(※5)によると、ヨーロッパ主要18カ国の2021年のEV販売台数(乗用車)は約119万台。2020年と比べて64%増という大きな伸び率を見せています。新車販売台数に占めるEVの割合も11%と、全体のシェア率は1割を超えており、日本やアメリカを凌ぐ大きな数字となっています。なぜヨーロッパでは、これほどEV普及が進んでいるのでしょうか?

理由はいくつか考えられますが、脱炭素を実現するためにヨーロッパ全体で高い基準を設けていることが大きな要因として考えられそうです。たとえば、ヨーロッパ委員会(EC)が発表した「欧州グリーンディール」に関する法案では、自動車分野における厳しい基準が設定されています。その目標値は温室効果ガスの排出量を「2030年までに2021年比で55%削減」「2035年までに2021年比で100%削減」するというもの。

また、ヨーロッパ各国でEVの購入補助金を出すなどの手厚い優遇策を取っていることや、ヨーロッパの主要メーカーがEVの品ぞろえを増やし、消費者側の選択肢が広がっていることなども、急激なEVシェア拡大の背景にあると言えそうです。

(※5)European Automobile Manufacture's Association:ACEA,"NEW CAR REGISTRATIONS BY FUEL TYPE, EUROPEAN UNION,"
https://www.acea.auto/files/20220202_PRPC-fuel_Q4-2021_FINAL.pdf

<中国>

中国汽車工業協会(CAAM)の発表によると、中国では、2021年の新車販売台数(乗用車・商用車の合計)が4年ぶりに増加(※6)。新車販売台数は約2,627万台で、なかでもEVをはじめとした新エネルギー車のインパクトが大きくなっています。

中国ではEVをはじめ、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や燃料電池車両(FCV)を含む電動化車両を総じて「新エネルギー車(New Energy Vehicle=NEV)」と呼び、自動車メーカーには一定の販売台数をNEVにすることが義務付けられています。

2021年のNEVの販売台数は約352万台(前年比157%増)、新車販売に占めるNEVの割合は約13%でした。そのうちEVは約291万台(前年比160%増)と急速に普及していることがわかります。

とりわけ中国で絶大な人気を誇っているのが「宏光Mini EV」という、上汽通用五菱汽車(中国の上海汽車と柳州五菱汽車、ゼネラルモータースが合弁で設立)が開発した小型EV。この「宏光Mini EV」は、エアコンを装備した最上位グレードでも60万円前後(※7)、エアコンレスのベース車なら50万円(※7)を切ることが大きな特徴で、手の届きやすい価格帯(※8)が、一般市民を中心に大きな人気を得ている要因になっています。

(※6)自動車産業ポータルMARKLINES,"自動車販売台数 中国 2021年",
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-china-by-month-2021
(※7)発売当初(2020年8月)の為替レート 1元=約15円で換算
(※8)2020年発売当初の価格設定

今後、日本のさらなるEV普及拡大のために必要なこととは?

今後、日本のさらなるEV普及拡大のために必要なこととは?

          

ここまでは、日本と世界におけるEV普及の現状とその背景を見てきました。それでは今後、日本でEV普及をさらに推進するためには何が必要なのでしょうか?

EV普及を阻む課題の多くは、バッテリーに起因します。EVの車両価格を押し上げている要因の一つは、バッテリー(リチウムイオン電池)の製造にレアメタルを使用していること。また充電時間の長さや航続距離などの性能面の課題に目を向けると、距離を伸ばすには、より大型のバッテリーが必要になりますが、これはすなわち車両価格の上昇や、車両重量の増加を意味します。

大手メーカーの参入による市場活性化が、価格・性能の改善にどこまで寄与するかは未知数ですが、技術開発・革新に加えて、バッテリーのリユースや中古市場の確立などが進めば、これらの課題も少しずつ解消していくかもしれません。

また、急がれるのが電力確保の問題。日本の自動車がすべてEVに置き換わったとして、そのための電力をどのように確保するのか、電力供給サイドの強化が求められます。

加えて、EV普及とセットで考える必要があるのが、再生可能エネルギーの普及です。なぜなら、いくらEVの普及で自動車運航時のCO2排出量をゼロにしても、EVの動力源、さらに遡ってEVの製造過程における電源がCO2を多く排出する発電法で作られたものであれば、意味がないからです。

太陽光や風力といった従来の再生可能エネルギーは、環境条件に左右されてしまうことから、供給が安定しないことが大きな弱点でした。したがって、再生可能エネルギーの普及には、発電量が多いときに電気を貯めておける蓄電システムの普及も必須です。実は、そのための蓄電池としてもEVに期待が寄せられている側面もあります。不使用時のEVを定置型の蓄電池のように使用する、という考え方です。

こうしたことがうまくいけば、EVが普及することで再生可能エネルギー普及が促進され、再生可能エネルギーが普及することでEVの開発・普及もさらに促進される......そんな好循環も生み出せるかもしれません。

          

東京センチュリーグループは、2030年までに国内オート事業分野(法人・個人向けリース、レンタカー)においてEVの管理台数10万台を目指しており、法人向けオートリースを担う日本カーソリューションズを通じて、EV導入を総合的にサポートする情報提供サービス(※9)を試験的に開始するなど、EV普及を後押しする取り組みを推進しています。

(※9)お客さまが保有するガソリン車の走行データを取得・解析し、EVの最適導入台数を算出。充電タイミングの最適化によるランニングコストの試算やCO2排出削減量などを提供。

2022年2月から、日本カーソリューションズおよびレンタカー事業を担うニッポンレンタカーは、九州電力と協働してEVレンタカーに関する新たな取組みを開始しました。EVを平日は九州電力の業務用車両として、土日祝日はレンタカーとして一般のお客さまに提供するものです。従前より東京センチュリーはグループを挙げて太陽光発電をはじめとする環境・エネルギー事業に注力しており、今般、九州に所有する大型の太陽光発電所とEVレンタカーの蓄電池機能を組み合わせることにより、再生可能エネルギーの有効活用についても検証しています。

さらには、EVのバッテリー診断・リユースの革新的技術を持つMIRAI-LABO株式会社と資本業務提携契約を締結。バッテリーを起点とした、オート事業における循環型ビジネスの構想が着実に進展しています。

こうした取組みを通じて、日本におけるEVの普及促進そして循環型経済社会への実現に向け貢献したいと考えています。

※記事の内容、肩書などは掲載当時のものです

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