サステナビリティ

ノーリスクはリスク?! 取るべきリスクに挑み事業成長を支えるリスクマネジメントとは?

2023年12月20日

近年、新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ侵攻、イスラエル侵攻など、地政学をはじめとする新しいリスク要因を意識しなければならない状況が続いています。東京センチュリーは、2022年度の航空機事業におけるロシア関連の損失を契機に、「カントリーリスク」をリスクカテゴリーに追加するなど、事業の拡大に伴い変化するリスク項目の定量的および定性的な把握に注力しています。環境や人権への取り組みなども新たなリスクとして考慮される中、東京センチュリーグループの持続的な事業成長を支えている「総合リスク管理部」の後藤さんと玉城さんに、業務のミッションと取り組む意義について聞きました。

総合リスク管理部 次長の後藤さん(左)とマネージャーの玉城さん(右)
総合リスク管理部 次長の後藤さん(左)とマネージャーの玉城さん(右)

ノーリスクはむしろリスク。統一的な物差しで取るリスク、避けるリスクを見極める

――コロナ禍やウクライナ侵攻、イスラエル侵攻などにより、地政学リスクのビジネスへの影響が注目されています。「総合リスク管理部」の役割や業務の魅力を教えてください。

後藤さん(以下、敬称略):リスクマネジメントのミッションは、「取るべきリスクに果敢に挑み、価値創出と成長を支えること」を掲げています。企業の成長のためには、積極的にリスクを取ることも必要であり、ノーリスクはむしろ将来のリスクとも言えます。

リスク管理の役割の一つは、組織の屋台骨が揺るがないような物差しを定量的および定性的に把握し共有することです。歴史を振り返っても、一定の頻度で想定外の出来事は発生しています。当社は今回のウクライナ侵攻やそれによる航空機事業の損失を受けて、これまで「信用リスク」で管理していた「カントリーリスク」を2023年度から独立指標化させましたが、グループ全体で共通認識を持った上でビジネスを検討していきましょうというメッセージを込めています。

リスク・リターン・資本の好循環
           

――東京センチュリーならではのリスクマネジメントのポイントを教えてください。

後藤:カントリーリスクの独立化もそうですが、今まで足りていなかったリスク要因を修正し、進化をさせるPDCAの速さがポイントですね。私は前職の証券会社や銀行で通算25年以上リスク管理業務に携わってきましたが、扱う商品のリスク要因は、金利や株式市場の変動など、比較的分かりやすいものでした。対して東京センチュリーは、祖業のリース(信用リスク)に加えて航空機や船舶、モビリティなど取り扱う商品が幅広く、地域的な広がりもあります。例えば、コロナ禍での人の移動の抑制など、外部環境の変化で価格変動する航空機のように、商品ごとにリスク要因が異なるため、勉強も想像力も必要です。

後藤「当社の海外航空機リース会社を買収した事例などを見て、『アグレッシブにリスクテイクする会社だな』と関心を持ったことが転職のきっかけでした」
後藤「当社の海外航空機リース会社を買収した事例などを見て、
『アグレッシブにリスクテイクする会社だな』と関心を持ったことが転職のきっかけでした」

後藤:当社は、広範な金融関連サービスを提供していますが、その分リスクで跳ね返ってくる範囲も広いと思っています。事業を拡大する中で、株主などのステークホルダーにも安心していただけるような統一的な計量の物差しや、7つのリスクカテゴリーのようなガイドライン整備が、リスク低減を図る重要な要素になりますね。

玉城さん(以下、敬称略):私は後藤さんと同時期に社内異動で「総合リスク管理部」に配属されました。主に環境・気候変動リスクに関する担当をしており、自ら取り組む案件が環境面にどのような影響を及ぼすのかを把握するために、環境影響評価ワークシートを用いた環境のリスクと機会のアセスメントや、サプライチェーンのCO2排出量のデータ算定などの環境マネジメントに取り組んでいます。各部門との協議を含め、気候変動やサステナビリティなどの国際的な課題や全社の動きに、幅広く携われる点にやりがいを感じています。

7つのリスクカテゴリーについて
          

――総合リスク管理部は専門家集団というイメージがありますが、人員体制についてお聞かせください。

後藤:総合リスク管理部のメンバーは兼務者含めて10名(2023年10月現在)です。業務内容はリスクマネジメントの全体整備や企業の存続危機に関わる事業継続計画、リスク計量、情報セキュリティ、コンプライアンスなどさまざまで、近年はESGや人権などの非財務関連のリスク把握も求められています。ただ、先ほどのカントリーリスクや投資案件のモニタリングなどは審査部、防災は総務部、危機管理広報は広報IR部など、分担して対応しています。

玉城:まさに少数精鋭で分業に近い体制ですよね。私は元々営業ライン出身で、2021年に異動してきた当時はリスク管理や環境の専門家だったというわけではなかったですが、チームの方々にサポートいただきながら何とか一人前にこなせるようになり、2022年度はTC Award(社内表彰)で優秀賞を受賞することができました。チームの半分以上は銀行や証券会社からの中途入社で年齢層も比較的高めですが、若手の方や未経験の方でも十分活躍できる場だと思います。

【ご参考】:異動のシーズン到来。経験者が語る、異動で得た内面変化と成長の余白。

玉城「総合リスク管理部では、私が一番若手ですね(笑)。私のように育児中の方や介護と両立されている方でも、とても働きやすい職場だと思います」
玉城「総合リスク管理部では、私が一番若手ですね(笑)。
私のように育児中の方や介護と両立されている方でも、とても働きやすい職場だと思います」

多様化するリスクを評価・コントロールする総合リスクマネジメントフレームワーク「ERM」とは?

――2023年度からの中期経営計画でも「総合リスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management、以下、ERM)による経営資源の効率的な配分を掲げています。ERMについて教えてください。

後藤:例えば、リンゴとミカン、ブドウを比べて合算する場合をイメージしてください。まずは、「個数なのか、成分なのか、どんな尺度で測るか」ということを考えるのではないでしょうか?
ERMも実は同じで、信用リスクから航空機、船舶、不動産、株式投資まで単純には合算・比較がしにくい中で、組織として統一の指標・物差しで見ていく必要があります。

例えば、1機100億円の航空機を数機持っているとして、100年に1度のストレス事象が発生して壊れてしまった場合、その合計の最大損失額はどのくらいなのか、確率的・統計的にはおおむね計算することができます。「そのような“もしもの最大損失額”に対して、企業として十分カバーできる分だけ用意するお財布(=資本)」を算出し、統一の物差し(=リスク量)として事業部門側に示し、必要に応じて上限などのガイドラインを設定しリスクマネジメントすることが、ERMです。

(左図):資本利用率ガイドラインイメージ図 (右図):リスク量の高い航空機、投資、不動産などの特定カテゴリーに緩やかなリスク上限(ガイドライン水準)を導入
(左図):資本利用率ガイドラインイメージ図
(右図):リスク量の高い航空機、投資、不動産などの特定カテゴリーに緩やかなリスク上限(ガイドライン水準)を導入

――ERMは事業部門側にとっては難しい指標ではないかと思いますが、どのようにフィードバックや理解を促しているのでしょうか?

後藤:銀行・証券などの規制業種ですと、規制に則してリスク管理部門が決めるケースが多いと思いますが、当社の場合は各事業部門と擦り合わせを行い、その後、経営層と方向性を確認の上、枠組みを決めています。2023年度からは航空機など比較的リスクが高い資産には、意図しないリスクの集中を避けるためにリスク量の上限を試行的にガイドラインとして設定・導入しています。ただ、私たちも取り締まる意図はもちろんなく、不安要素を減らしながら事業拡大にまい進していただきたいと考えていますので、適宜相談しながら進めるようにしていますね。

――投資に関するマネジメントフレームワークも設定されていますが、プロジェクトの継続や撤退なども提言するのでしょうか?

後藤:そのような具体的な判断や協議は審査部門が担当です。カントリーリスクも含めて「この投資案件はやめましょう」などと制限をかけることはしていません。しかし、大規模M&A(合併・買収)では特に、「所要資本がこのくらい」「リソースや財務規律から考えるとこの措置が必要ではないか」といった意見出しや見積もり提示を積極的に実施しています。

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加速度的に変化する非財務リスクには密なコミュニケーションを

――昨今は環境や人権など非財務に関するオペレーショナルリスクも重要視されているとのことですが、具体的な取り組み例を教えてください。

玉城:環境関連での取り組みの一環として、カーボンニュートラルに向けた当社グループのCO2排出量の算定を行っています。サステナビリティ推進部などと連携して、グループの算定範囲の拡大・算定方法の精緻化やCO2排出量削減に向けた取り組みを推進しています。

CO2排出量は第三者による検証を取得しており、検証を受けたCO2排出量をもとにCDP(国際的な環境情報開示)の質問回答を行っています。CDPの回答には期限が設けられているため、前年度の環境データを各社・各部より入手後、いかに効率的かつ正確に算定するかが鍵となります。
2022年度にはIT推進部のサポートの下、DX化を行い、データ集計方法を見直した結果、第三者検証先から一定の評価が得られたことや、TC Awardで優秀賞を受賞でき、とてもいい経験ができたと思います。

また、今年度からサステナビリティ推進部と連携してICP(インターナルカーボンプライシング)も試⾏的に導入を開始しました。ICPはScope1およびScope2を対象に、CO2排出リスク(マイナス面)や削減効果(プラス面)を投資判断に合理的に組み入れることや、CO2価格の見える化によるリスクやコストの感知を高めることを目的にしています。
また、人権についても人事部などの関係部署と協議を進め、2024年1月から投融資案件の「人権リスク評価」をトライアルで開始する予定です。外部環境に応じて、今後も新しいリスクへの取り組みは必要と感じています。

知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは(出典:資源エネルギー庁)
知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは(出典:資源エネルギー庁)

――対象も視点も広くせざるを得ない中で、事業部門、関係会社との密なリスクコミュニケーションがポイントになりそうですね。

玉城:その通りですね。さまざまな事業や子会社が増えているので、祖業のリース事業で培ってきたものとは全く異なるリスク事象への対策もますます必要となってくると思いますので、リスクコミュニケーションはとても重要なポイントですね。

取るべきリスクに果敢に挑み、リスクマネジメントの高度化を目指す

――ますます高まるリスクマネジメントの重要性をどのように捉えていますか。

後藤:繰り返しになりますが、リスクマネジメントのミッションは、「取るべきリスクに果敢に挑み、価値創出と成長を支えること」です。中期経営計画でもリスクマネジメントの高度化を掲げています。また、外部環境が複雑さを増し、将来予測も困難な状況にあることから、リスクマネジメントの観点を持ちながら、業務運営に当たる重要性は高まっており、求められるものも変化していると感じています。
当社の研修メニューも多岐にわたりますが、ESGや人権だけではなく、人への投資が最終的に財務に跳ね返ってくるのかなと考えています。非財務リスク指標で見るポイントなどを自分なりに理解しながら進めているところですね。

玉城:リスク管理全体から見たら私が担う環境マネジメントなどは一部分ですが、気候変動対策に代表されるような国際的な課題解決の一翼を担えるよう微力ながらも今後も取り組んでまいります。

後藤「社内の人事異動として未経験者でも積極的に人員募集をしています。例えば、リスク管理やガバナンス経験後、再度営業や事業部門に戻ることで、リスクを勘案し事業を検討できるスキルや広い視野が身に付くと思います。ぜひそのようなキャリアに興味のある方をお待ちしています」
後藤「社内の人事異動として未経験者でも積極的に人員募集をしています。例えば、リスク管理やガバナンス経験後、再度営業や事業部門に戻ることで、リスクを勘案し事業を検討できるスキルや広い視野が身に付くと思います。ぜひそのようなキャリアに興味のある方をお待ちしています」

後藤 貴久生(ごとう・きくお)

総合リスク管理部 次長

国内金融機関にて市場リスク、信用リスクなど幅広いリスク管理業務を経験し、2021年10月にキャリア入社。リスクマネジメントの枠組みの整備や推進、リスク計量などを行う。

玉城 志穂(たまき・しほ)

総合リスク管理部 マネージャー

2002年、旧東京リース入社。エリア営業の後、国際部門でベンダー営業や現地法人の運営支援を経験し、2021年10月より現職。環境事務局の担当としてEMS(環境マネジメントシステム)全般やグループ各社を含めたCO2排出量の算定など環境分野の業務を担う。

※記事の内容、肩書きは掲載当時のものです。

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